Akemi sugii

春はそよそよ、夏はさらさら、秋はかさこそ、そして冬にはぴゅーぴゅーと、緑の小さな風を吹かすことができたなら、と思います。季節季節の風がこころのどこかに小さな起伏を生むように、花やみどりの心地良きを感じて頂けるような仕事をして参りたいと思います。

植物という側から都市緑化を見てみると、これまで「触れられる緑」「感性をくすぐられる緑」というものが都市の中にはあまりにも少なかったことに気づきます。ヒートアイランド現象の緩和に代表される機能的な緑、という部分では注目されていますが、人の心に響く緑が都市の中にはもっと多くあってもいいように思います。

植物を育てていると、人のもっているいろいろな感情が引きだされることに気づきます。花が咲いたり実がなった時の楽しさや嬉しさはもちろんのこと、葉が大きくなったり茎やつるがのびる驚き、枯れてしまったときの悔しさや悲しさ、時には思うように育たないことへのいらだちなど、その時々で自然に心が動かされます。このように楽しいことや辛いこと、失敗や成功も含めて、心に何かが生まれることが「心を育む」もとになるのだと思います。また植物を育てることは相手の立場に立って何かをすることであり、同時にそれは自分が何かをすることによって何かが生まれることを実感できることでもあります。
瞬時に動くことがほとんどないので、生きているという実感が動物より少ないかもしれませんが、育てていればそのゆっくりで小さな動きの中に“生”を見つけられるはずです。そしてそれが想像力や創造力を生み出す心の糧になってくれるにちがいないのです。

杉井明美 Sugii Akemi

園芸家。有限会社風のみどり塾主宰
千葉県生まれ。女子美術短期大学卒。生家は千葉県南房総市の(株)杉井農園。
VANジャケットに入社し、「グリーンハウス404」店長を経て園芸家に。
1993年有限会社風のみどり塾を設立。
1996年に六本木アークヒルズ内屋上庭園の改植工事を手掛けて以降、都市緑化にも独自のセンス、手法を取り組む。
製作・維持管理する庭として、六本木アークヒルズにあるアークガーデンが有名。
現在、ヒルズガーデニングクラブの専任ガーデナーとして活躍するほか、千葉大学非常勤講師、(財)都市緑化技術開発機構理事、(社)日本家庭園芸普及協会技術顧問、園芸文化協会理事などに就任する。
新聞への出筆、ガーデニング関係の著書も多数。